ブールメルカは走り出す。

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ニコラ・ブールメルカはドイツに住みアルジェリア人の父とドイツ人の母の間に産まれた、生まれつき心臓が弱く20mも走ることの出来ないムスリムの少女だ。ニコラの父の自慢は彼の産まれ故郷のアルジェリアの家の3軒隣の家から世界的ランナーのハシバ・ブールメルカが出たことで、ことあるごとに幼い頃の彼女と一緒に撮った写真を見せびらかしていたが、ニコラがハンデを背負っていたことがわかってからは彼は決してそのことを自慢することは無くなった。ニコラは幸いにも5歳の時に心臓を移植することができ、走ることも可能になったと医者は父に告げたが、彼女は決して走ろうとはしなかった。怖かったのだ。
そしてニコラが8歳になった1993年。彼女は父の部屋の引き出しから一葉の写真を発見してしまう。そこに写っていたのは若き日の父とニコラにそっくりの少女。写真の裏には「ハシバ・ブールメルカ 8歳」と書かれていた。ニコラは写真について父に尋ねてみたが、父はとぼけて有耶無耶にしてしまう。ニコラはその写真をこっそりと自分の物にした。そしてその年の8月、ニコラは偶然にもテレビで写真の少女と再会する。シュトゥットガルトで開催中の世界陸上女子1500m走で銅メダルに輝いた女性こそが写真の中の少女ハシバ・ブールメルカだった。自分とそっくりだった少女がこんなに力強く、そして美しく走る姿を目の当たりにしたニコラはようやく走り出す決心をしたのである。
という設定でとりあえずゆっくりだけどちょっとずつ走ってみることにした。